我が家の隣は田んぼが広がっている。
慣行農法ではあるがトンボやカエルは居るし
田んぼの奥には北アルプスがそびえ立ち景観はすこぶる良い。
その田んぼでも続々と稲刈が始っている。
上位機種だと定価だと1,000万円以上するようなコンバインが駆け巡る。
農家の倉庫で年に一度のこの日を待ちわびていたことだろう。
コンバインのすごいところは
稲を刈り取ると同時に、藁の部分は粉砕し田んぼに返し
脱穀し籾だけを取り出してくれる。
その籾をトラックに積み、乾燥機に入れると
あっという間に適切に乾燥され、はざ掛けいらずで
直ぐに新米として食卓にあがる。
そう、新米の季節の到来です!
では、コンバインのない頃はというと
鎌で稲を刈りとるわけです。
(うちの次男坊の園の稲刈り)
機械の何十倍の人出で行う作業ですね。
さらに束ねてはざ掛けにして
水分が10数%になるように乾燥させます。
乾燥があまいとカビるし、乾燥しすぎると粒が割れやすくなる。
天候や湿度の不安定の影響下で幾日もかけて行います。
それがコンバインと乾燥機があると時間と労力を
最小限でできてしまいます。
保存性を考えると機械に軍配が上がるかもしれません。
しかし、食養生的にははざ掛けで天日干しをお勧めします。
刈られ命を終えようとする藁に残る精(エネルギーのようなもの)が
次世代へつなごうと穂先の米粒に集約されていくのではないでしょうか。
天日干しの旨さはそこにあるような気がします。
そして、秋は天の精と
大地の精を蓄えた米やその他の実りをいただき
体内に蓄える季節でもあります。
若い頃も食養生は大切ですが、私もこないだ42歳になり
身体の変化を日々実感しており、季節に即した食養生の必要性を
切に感じるようになってきています。
さて、40代と四季の養生について少し紹介します。
三百年前に書かれた貝原益軒の『養生訓』(1713)は健康指南書で今でも読まれています。
また益軒に学んだ儒医の香月牛山著の『老人必要養草』(1716)もまた
現代でも色褪せない養生の知恵が詰まっている書籍。
「若いときから養生に気をつける人は少ないが、
本来は若い頃のからの養生の積み重ねが大切である。」
養生書では四十歳頃にもなると、つとめて保養しなければならないとしていまます。
古代の医書『黃帝内経素問』にも
四十になると、「陰気が自然に半減する」とあり
飲食や色欲ともに注意して慎むことをすすめています。
四十歳は、いわゆる現代の感覚での老人ではない。
しかし老化のはじまりの年齢でなのです。
四季の養生
我々は四季のある自然と調和して生きていて。
そのため養生の方法は季節により異なります。
春は「発陳」といい、万物が新生するときである。
早起きして庭などを広く歩き身体をゆるやかにするのがよい。
夏は「蕃秀」といい、陽気が最も盛んになり、植物も繁茂する時期である。
早起きして一日を怠けることなく怒らないように精神を安定させる。
瓜類やスイカ、冷や麦は少し食べると熱を下げて気持ちが良い。
しかし夏は陰が体内に伏し、臓腑はむしろ冷えるときなので
多く食べると胃脾を損ない害がある。
身体を冷やしても消化器は冷やさないようにする。
秋は「容平」といい、夏の熱いのが極まって
秋の陰気に変わり、陽と陰が入れ替わる時季である。
この時は人の肺気を冒すとあり、呼吸器系の病に気を付けなければならない。
食べ物もトマトやナスなど身体を冷やす陰性の夏野菜は徐々に控える時季である。
冬は「閉蔵」といい、万物がみな納まり隠れるときで
早く寝て、遅く起き、静かにしてむやみに動くことを禁じるとある。
とのことです。
食養生的には規則正しい生活が好ましい。
しかし厳密には季節により変化していくのが理想的といえるでしょう。
話はもどりますが
新米の季節といえど、食べる量の適量をしりたいですね。
食事の量と回数
食事は腹八分が基本であるが『老人必要養草』では
健康な壮年は一度の食事の限度を二合五勺(一合は茶碗約二杯)となっています。
「老人は朝食を一合五勺
日が長いときは昼食を摂るようにする。
量は朝食の半分。
夕食は朝食よりも消化しにくいので朝食の三分の二でよい。」
基本一日二食で五合限度にせよと戒めています。
現代人の平均である一日一合弱からすると
多すぎる気もしますね。
でも農民は一升(十合)めしが普通だった江戸時代の人にとっては
養生で控えめにしてこの量なのですね。
現代ではパンや麺など多様化しており
米の出荷量の統計のある50年前より
日本人の一人あたりの米消費量は半減しています。
米の出番が減り、おかずが中心の食事が多く
主食のはずの米が主でないどころか、出番すらないことも多い
それが現状ではないでしょうか。
太るからとかいって米を減らす人も多いですが
米が太るは誤解です。
米が太るなら江戸時代の人々はみんなおデブです。
米を主食とした適切なバランスの食事が
健康な体型の維持にもつながることは食養生の基本です。
そんな現代では
むしろ米の量を増やし、おかずを減らすのが適切な食養生バランスといえるでしょう。
みんな米を食べましょう!!