紫外線(太陽)を避けていませんか。

現代のような飽食の世の中
それも先進国内で太っていても栄養失調はありえます。
三大栄養素(糖質、脂質、タンパク質)は過剰ないわゆるカロリー過多だが
微量栄養素であるビタミンやミネラルが不足する栄養失調です。
世界人口の30~50%がビタミンD不足という説もあります。
今回はこのビタミンDに注目してみましょう。
ビタミンDは、腸からのカルシウムの吸収を高め血中濃度を高める働きや
腎臓の働きによるカルシウム排泄を抑制したり、骨から血中へカルシウムの放出を高めたりと
カルシウムとの関連性が高い。
また免疫反応への関与も示唆されている身体に不可欠な存在です。
ちなみに、カルシウムは骨や歯の形成はもちろん
筋肉の収縮,神経伝達物質を放出し興奮や緊張の緩和
血液凝固,動脈硬化や高血圧の予防,イライラを鎮めるなど
さまざまな生理作用があります。
このカルシウムを口から摂取すると
体内にあるビタミンDの働きでカルシウムが吸収されます。
つまり、ビタミンDの不足はカルシウム不足が招く様々な病態の一因にもなります。
例えば骨が正常に形成されない乳幼児の骨格異常である
クル病の原因のひとつとしてビタミンDの欠乏があげられます。
とまあ、ビタミンDが私たちに不可欠な栄養素であることはわかりました。
さて、栄養概念が浸透した現代で
なんと世界人口の30〜50%がビタミンD不足だとする
ボストン大学のマイケル・ホリック教授(ボストン大学医学センター医学・生理学・生物物理学部教授)の興味深い説もあります。
では、ビタミンDはどうやって補給しましょう。
ここで、何を食べればいいの?
と考えた人は要注意です。
健康マニアがはまりやす落とし穴にはまってしまいます。
魚の内臓にはビタミンDが豊富なので
小魚を内臓ごとまるごと食べるのは理にかなっています。
しかし・・・・
そもそも、ビタミンDは皮膚の中にあるコレステロールに
紫外線が作用して体内でつくられる一種のホルモンです。
つまり太陽を浴びればいいのです。
ビタミンというと食事から摂る栄養素だと思いがちだが
ビタミンDは食事から得られるより体内でつくられる量のほうが多いといわれています。
皮肉なこと、ビタミンDは体内で作れる栄養素ですが
生活様式の変化や紫外線対策などで現代人は太陽を浴びなくなってしまった。
そのせいで、大昔はあり得なかった
ビタミンDが不足する人が多発するという事態になっています。
以下、《病の起源1 睡眠時無呼吸症/骨と皮膚の病気/腰痛 NHK「病の起源」取材班[編著] NHK出版》
を引用しながら(引用箇所は斜字)すすめます。
上記のホリック教授が行った研究では
日焼け防止指数の高いものを使うと、皮膚でビタミンDを作る能力は
最大99%も減少するという結果が出ました。
さらに最近の研究では心臓発作や脳卒中で死亡するリスクは、ビタミンD不足と
直接関係があることがわかっている。
「わかっていることは、ビタミンDには免疫系を調整する働きがあるので
儀薪尿病、リウマチ性関節症、多発性硬化症、炎症性腸疾患など
すべての自己免疫疾患は、ビタミンDが不足するとリスクが高くなるのです」
とのことです。
紫外線が強くなってきているので皮膚がん対策だとか
美白のためとか、日焼け止めクリームを塗る人も多いはず。
これは、行き過ぎた紫外線対策への警鐘でしょう。
食養生では太陽は朝日を浴びる「太陽食」を勧めており
食事内容を正すことより優先しています。
(太陽食について詳しくはこちらをご参照ください。)
少なくとも紫外線は絶対悪との誤解は避けたいです。
紫外線は私たちにとって必要な存在ですが
過剰になるとそりゃ負担にもなるだけのことです。
しかも、「太陽=紫外線」ではないです。
太陽の様々な恩恵の中に紫外線という要素もあるだけです。
さらに同書ではこんな衝撃の情報もありました。
日本でも今、ビタミンD不足の乳幼児が増えているという。
京都大学の依藤亨講師(小児内分泌代謝病学)は、京都市の産婦人科病院の協力を得て、
2006年5月から一年間、新生児1120人の頭蓋骨を調査した。
そのなかで、骨のやわらかい子が約2割いることが判明。
4〜5月生まれの割合が高く、11月生まれは少なかった。
ビタミンDは紫外線を浴びることで体内で活性化されるため
出産前3〜4か月の日照時間の影響と考えられる。
1か月検診時の血液検査では骨のやわらかい子のうち約3割にくる病の兆候があったという。
血液中のビタミンDは母乳だけの子の約6割が不足し
粉ミルクや混合栄養の子は全員正常だった(「朝日新聞」2008年4月1日より)。
日本では日焼けを避ける傾向が強く
妊娠中でも部屋にこもったり
子どもを日光に当てないようにする母親が増えたことが原因のひとつだと考えられます。
母乳は免疫強化などメリットが多いが
母乳の中で唯一足りていないのがビタミンDであるという報告があります
ここに中途半端な健康法の自己処方の危険性があります。
妊娠中に、片や紫外線を避けておきながら
その一方で母乳だけの育児をしたいという人も割といるでしょう。
だからといって母乳が出るのに粉ミルクにするのは
食養生的にもおすすめしません。
粉ミルクを足さずに母乳だけで育てたいなら
妊娠中にいかに太陽のもとを散歩しているか
そして、乳児にも太陽を浴びさせてあげれるかが大切です。
自己流の健康法は食養生の基礎を押させていないと
危険だという一例ですね。
では、毎日どれぐらい太陽を浴びる必要があるのか。
東京都老人総合研究所の鈴木隆雄副所長は
特殊な日光浴をしなくても、毎日手や顔に少しずつ
太陽の光を浴びることが重要だと言う。
「血中のビタミンD濃度を上げるために必要な太陽光は
皮膚の露出が1平行センチメートルであったら
大体1時間浴びればいいと言われています。
顔全体を考えますと、それよりもざっと100倍ぐらいは
露出していますから、ほんの5分も浴びれば十分です。
季節の差は考慮する必要はあるが
それほど難しくはないはずです。
朝の日の出をいただくついでに
呼吸法や体操、散歩なども組み合わせると
ますますよいでしょう。
本来、健康を得るのにお金はかかりません。
健康に必要なものは大概身近に存在します。
その代表が「太陽」です。
紫外線を誤解されていた方も
これからは賢く紫外線ともお付き合いしていきましょう。